中国六千年の壷・仰韶文化半坡類型の土器
(2009年6月10日)


  中国の文明について、中国五千年とか、中国四千年とかの言い方があるが、文明と言う見方からすれば、大げさで出鱈目である。実は2000年に終了した中国の考古学プロジェクト・夏商周断代工程では、中国の最初の王朝夏をB.C.2070年からとしている。これに拠れば、中国4千年の文明と言ってもいいのかもしれないのだが、これは神話を基にした年代であって、考古学的事実ではない。中国は偉大な中華文明をどうしても出来るだけ古くからあったと言いたいらしい。王朝が出来たことをを文明の初めとすれば、中国の最初の王朝である「夏」が出来たのは、考古学的には3700年前くらいのことに過ぎないらしい。

  しかし中国には既に6000年以上前から優れた文化が存在していたのも事実である。例えば西安の近くの半坡(はんぱ)村には、仰韶文化半坡類型の文化があった。この文化は前4800〜前3600年頃のことであるから、その頃を今から大よそ6000年前といっても間違いではない。そこには今、西安半坡博物館がある。

  今から6000年前といえば日本では縄文前期に属する時代で、新石器時代の半坡村には防御柵や濠を備えた原始社会部落があって、そこから仰韶文化半坡類型の土器がたくさん出土したのである。私はアンダーソン土器ではないが半坡類型の土器を何個か買うことができた。

  下の写真の壷は、仰韶文化半坡類型のものであるから、本物の「中国6000年の壷」といっても間違いではない。ただし中国語では下の形を壷とは言わず、「瓶」と言うらしい。底が尖っているので尖底瓶という。

  先日、東京国立博物館の東洋館に見に行ってみたが、ここには中国6000年前の土器の展示は無く、せいぜい4000年前の斉家文化の土器が一番古かった。(実は最近になって東京国立博物館の収蔵品について、写真を検索してみたのだが、斉家文化の土器より古い彩陶と言われる土器が数十個収蔵されているのを発見した)その斉家文化の土器より2000年も古い土器が、北京の潘家園の骨董市場で売られているのが不思議である。日本では殆ど日本の土器を買えないと思うが、中国では6000年前の土器であっても買えるのである。中国は不思議な国である。しかし6000年前の仰韶文化半坡類型の土器は東京国立博物館には無いようだった。

この形は小口双耳尖底瓶とか、小口鼓腹尖底瓶と言うらしい。このような6000年も前の
仰韶文化半坡類型の土器は、日本ではほかにないのではないだろうか。



かなり大きくて重い土器で、斜めに入った溝の文様が特徴


半坡博物館に飾られている尖底瓶


墓の中から人骨と共に出土する尖底瓶や平底鉢。
手と足の人骨が見える。半坡博物館にて。






  円底鉢。鉢の表面は、普通、とても滑らかに磨かれている。鉢の縁に幅4Cmくらいの帯状の彩色が施されているのが僅かに確認できる.。縁にある帯は半坡類型の特徴でもある。下のほうに載せた西安半坡博物館の円底鉢には縁に彩色がハッキリ見える。



円底鉢の底





  波折紋小口鼓腹瓶。この文様を波折紋というらしい。この波折紋は半坡類型特有の文様であるらしい。





北京の古陶文明博物館で見た、仰韶文化半坡類型の波折紋の瓶。





  これも円底鉢。底に筵か籠の目がはっきり転写されている。鉢を横に過ぎっている線も一種の文様らしい。



底の筵(?)、籠(?)の目の跡


半坡博物館で撮影した円底鉢の底。筵(?)の目が転写されている。





  人面鳥魚紋葫芦瓶。人の顔と、鳥の紋と、魚の紋が描かれている、ひょうたん形である瓶。





半坡類型の典型的な「人面魚」の文様。半坡博物館で。
この形状は縁に厚みがあるので鉢ではなく「盆」と言うらしい。

これは本物であるが、典型的な文様のものこそ、贋物が多い。





  双魚紋鉢。この魚の文様は一匹の魚か二匹の魚か? 調べてみるとやはり魚二匹の文様である。中国歴史博物館に収蔵されている半坡雙魚紋彩陶鉢の写真はこれで、二匹の魚の文様としている。

  中国歴史博物館のものは半坡類型の物であるが、収蔵したものは、文様は同じでも土器の本胎が半坡型とはチョッと違うような気もする。何故なら半坡類型の鉢の内側は滑らであるが、収蔵品は手で成型した跡が残っている。しかしこれも半坡類型であるのかもしれない。

  魚紋の鉢が欲しかったので、魚の文様の土器は無いかと回族の馬さんに聞いてみたら、携帯で仲間から取り寄せてくれた。中国とは不思議な国である。



手で成形した跡が残っている。





  平底深鉢。水垢が固着している。中国の黄土高原地帯から出土する土器は、多くの場合、表面が水垢で覆われているらしい。もし文様があっても水垢で見えないものが普通らしい。日本の土器の場合、このような水垢は固着しないのだと思う。日本の土壌は酸性だからかもしれない。黄土高原で見られる土器の水垢は、アルカリ性の析出物だと思う。何故なら、出土後、土器を希塩酸で洗って土器の表面をが見えるようにするらしいのだが、その際化学反応で白煙が出という。もし白煙が出ないならば、それは偽物の可能性が高い。何故なら、それは膠などで黄土の土を塗りつけて、本物らしくした偽物なのである。

水垢の下には磨かれた表面がある平底鉢。





  葫芦瓶。葫芦とは瓢箪のこと。他のものを買ったとき、サービスでタダで貰った。小さくて売買価値は無いのだろうが、タダで貰った物であっても、6000年前の本物である。彩色は無く水垢が固着している。水垢が本物の証拠になる。立派な彩色土器であっても本モノであることを示すために、水垢を完全に洗い落とさないのが発掘者の憎い技術である。

文様のない小さい葫芦瓶















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